大切なのは「最適な一着」に出会うことです。
数多くの生地やデザイン、デティールの豊富さはオーダーメイドでは当たり前のことです。サルトリアロッソでは、多くの選択肢の中からお客さまの個性や着用するシーンに応じた、最高の一着をご提案いたします。
■服作りの初歩は「素材特性の把握」
紳士服の”仕立て”が当たり前の時代には、一人の縫製職人が一枚の平面な織物を加熱、ダーツ処理等をしながら一着ごとの素材特性を把握し、クラフトマンの腕を駆使して、人の身体に沿った立体的な服を作り上げていました。
サルトリアロッソでは、お選び頂いた生地の素材の特性に合わせて縫製工場を使い分けています。これは、現代のクラフトマンの技術と経験を最大限に引き出すための私共のコダワリです。
■着心地を決定づける芯地と芯据え
着心地の良さは、「サイズ感」と「余計な当たり、余りが無いこと」であり、身体の曲線に程よくフィットさせることで決まります。
着る人の存在感を最も誇示する胸を中心とした前身頃。服の縫製には、大きく分けて毛芯縫製と接着縫製とがあります。この「毛芯」にもいろいろなものがありますが、私共では「毛が長く張りの出る馬の尻尾(バス)」が最高と考えています。さらに、一層の美しさと肩の立体感を重視し、四重構造(台芯+肩バス芯+胸増芯+フェルト)の毛芯を使用しています。
※毛芯縫製には、毛芯と前身頃を一枚の布のように止めていく「芯据え」という工程があります。この「芯据え」こそ服の良し悪し、着心地を決める縫製上の生命線なのです。
「芯据え」を行なう前に、「芯の大きさ、ウエストラインの位置、増し芯の位置、クセ取りの位置」が服に合っているかを見極める技が必要不可欠です。また、生地それぞれの特性を考慮しながら「芯据え」を行なうことにより、平らな生地を立体的に丸く形成し、胸部の膨らみを表現します。
服の着心地は、「芯地の品質」と「芯据えに対する姿勢」が決めると言っても過言ではありません。
※毛芯縫製はオプションです。
■見えない箇所のクセ取りがフォルムの生命線
人の身体は胸の膨らみの他、腰のくびれ、前肩付け、背肩の張り、腕の凹凸、尻の膨らみなどの複雑な曲線の複合体で体型を形成しています。
服の美しい外観とフォルムを形成するためには、婦人服のようなダーツ処理は極力控え、身体の丸みのポイントに合わせたアイロン処理が必要不可欠です。
この「クセ取り」と言われるアイロン処理は、織物の「ねじられた生地が元に戻らない」という素材特性を活用することで、生地に理想的な立体感を生み出します。一着の服の中で、「クセ取り」がどれだけの箇所に取り入れられるかで、その着心地は大きく左右されます。ジャケットのウエストライン、袖の前縫い目、背中の肩甲骨の膨らみ、パンツの後ろの縫い目などは、特に重要な箇所と言えるでしょう。
目に見えない箇所に工程と手間をかけた服は、着心地と着用したときのフォルムが違います。
■裏地タップリが服の良さを物語ります
洋服先進国の服作りには「表はスッキリ、裏はタップリ」という格言があります。ここでいう裏とは裏地のことです。手作りの時代から、縫製職人は「如何に裏地にユトリを多くいれるか?」を念頭においていました。一見シワだらけの裏地には、実は大事な理由が隠されています。
一つは「動きやすさからくる着心地の良さ」のためです。背、脇、裾に施したキセといわれる裏地のダーツがアクションプリーツの役割を果たし、着用時の動きやすさを実現します。
最も動きが伴う袖の裏地は、まとわりつかない程度まで大きくユトリを入れています。
二つ目は「表のスッキリ感」のためです。伸び縮みという毛織物の特性を考慮し、裏地には伸縮しない素材をタップリ用いて生地のつなぎ目などの伸縮を防いでいます。
裏地をタップリ使うことで「動きやすく、着心地の良い服」が仕上がります。